オフルームビーズワークにおける基本事項

オフルームとは、織り機を使わないで針と糸を使って編む手法のことを言います。
ビーズ織りのバックやタペストリーに代表される分野をルームワーク(loom work)とか、ビーズルーム(bead loom)などと言い、これらは、専用の織機を使って布を織るように製作します。
これに対して、織り機(loom)を使わないで作るビーズワークのことを、オフルームビーズワーク(off-loom beadwork)、略してオフルームなどと言っています。ビーズステッチという言い方もあります。 主にシードビーズを使いますが、どんなビーズを使ってもできます。

作品を作る過程でできる編目のことをステッチと言います。 ステッチの種類は、とてもたくさんあります。ビーズワークをされている方は、テグスを交差しながらビーズを編んだことがあると思いますが、これもステッチの一つです。 直角編み(Right-Angle Weave)というものです。
中でもペヨーテステッチは大変よく使われるステッチの一つです。 初めての方はペヨーテステッチから初めてはいかがでしょうか。具体的な作品の作り方も載せました。

異なるステッチ同士を組合せたり、シードビーズ以外のさまざまなビーズを組合せることで作品の幅が広がります。ビーズワークは初めてという方も是非挑戦してみてください。

主にシードビーズを使いますが、シードビーズ以外にも竹ビーズやファイアーポリッシュなどの様々なビーズも併せて使います。
シードビーズは、丸みのあるドーナツ型の比較的小さなビーズで、直径が4.0〜0.6mmぐらいのものを指します。
サイズ表示では、size6/0〜24/0と表示されます。(数字が大きいほど小さいビーズ)。

以下にシードビーズのサイズを表にしました。

シードビーズサイズ表
6/0 = 4.0mm13/0 = 1.7mm
7/0 = 3.4mm14/0 = 1.6mm (特小、極小)
8/0 = 3.0〜3.1mm (丸大)15/0 = 1.5mm (特小、極小)
9/0 = 2.7mm (丸中)16/0 = 1.4mm
10/0 = 2.3mm (丸小)17/0 = 1.3mm
11/0 = 2.0〜2.1mm (丸小)18/0 = 1.2mm
12/0 = 1.9mm
シードビーズのサイズ比較写真

日本では、丸大(8/0)、丸小(11/0)、特小又は極小(15/0)というサイズでの販売が多く、丸小サイズのビーズが一番手に入りやすいと思います。
オフルームでよく使われているのもこのサイズです。

同じ丸小(11/0)と表示されていてもメーカーによって形や大きさに多少の差があるので、組合せて使う時や均一な編目が必要な作品の場合は注意が必要です。
日本製のシードビーズは、形が揃っているのですが、メーカー別に比べると、例えば、MIYUKIビーズは丸っこく、TOHOビーズはやや角ばった形状をしています。
また、チェコ製のシードビーズは、日本製の物と違った色合いがあり、きれいなのですが、形にバラつきがあるため、ペヨーテステッチなどできれいな平面を編む時などには、ビーズのサイズを揃えるために選り分けるなどする必要があります。

シードビーズとデリカビーズとの比較写真

また、ビーズ織りで使われているデリカビーズもシードビーズの一種です。
竹ビーズを小さく切ったような形で、穴が大きくてガラスの厚さが薄く繊細なビーズです。 ビーズ織り専用とありますが、オフルームでもよく使われているビーズで、ペヨーテステッチやブリックステッチは、このビーズを使うと作業しやすいです。
MIYUKIのシードビーズ、デリカビーズは、ビーズファクトリーさんで多くの種類を販売しています。

ビーズの加工。下記の写真は同じ色のビーズですが、それぞれ加工が異なり、質感が違うのが分かると思います。
シードビーズの表面加工の写真

①が透明でガラスの色のままの物。 … 「スキ」とか「トランスペアレント(Transparent)」と言います。
②は、①の穴の内側に銀メッキされた物でキラキラ光っています。 … 「シルバーライン(Silver Lined)」、「銀引」と言います。
③は、①の外側に虹色に光るような加工がされた物。 … 「オーロラ」、「レインボー」、「AB(Aurora Borealisの略)」と言います。
④は、①につや消し加工した物。すりガラスのような質感です。 … 「つや消し」とか「マット(matte)」、「フロスト(frosted)」と言います。
⑤は、①と同じ色で不透明な物につや消し加工した物。 … 「マットオパーク(Matte Opaque)」と言います。

その他にも、
・不透明な物 … 「オパーク(Opaque)」、「(ギョク)」と言います。。
・透明又は透明系カラービーズの中を染めた物 … 「カラーライン」、「中染め」と言います。
・ビーズの外側に着色した物 … 「dyed」、「着色」、「外染め」と言います。擦れによって色が落ちやすい傾向があります。
・金属のように光る加工をした物 … 「メタリック」と言います。
・亜鉛メッキした物。 … 「ガルバナイズド(Galvanized)」、「亜鉛メッキ」と言います。
・透明系のつやが出る加工をした物。ツルンとした質感。 … 「ラスター(Luster)」と言います。
・ゴールド系のつやが出る加工をした物 … 「ゴールドラスター」、「金ラスター」と言います。
・オパールのような半透明色のビーズにラスター加工した物。 … 「セイロン(Ceylon)」と言います。
・シルクサテンのような光沢を施した物。 … 「シルク(Silk)」、「サテン(Satin)」と言います。
・ビーズの外側に銀メッキした物。 … 「シルバープレイテッド(Silver Plated)」、「外銀」と言います。

・上記の加工を組み合わせた物、例えば、シルバーライン+マット、オパーク+ラスターなど他にもいろいろあります。

このようにビーズの加工は様々ありますので、色合わせをする時には、作るアクセサリーや小物のイメージに合うように、どんな加工のビーズを使うかも考える必要があります。
例えば、紺+シルバーラインの金の組合せの場合、紺のビーズをマット加工の物にした時と、ラスター加工の物にした時では、かなり印象が異なります。

最低限必要な道具は、ワックスビーズ皿、作業用マット、糸切りバサミ、ペンチなどです。
後は、作る作品や材料によっては、特殊な道具が必要なことがありますが、その時に用意すればいいので、とりあえず、上記の物だけ揃えてください。
後は、糸と針でビーズを編むだけ。
この手軽さも、オフルームビーズワークの良さです。
は、ビーズワーク専用の針を使いましょう。普通の縫い針でビーズに通っても、糸で編む内に穴が小さくなり、通りにくくなります。
また、サイズの小さいビーズは穴も小さく通らないことがあり、無理して通すとビーズが割れます。
手芸店の針のコーナーに「ビーズ針」という名前で置いてます。
John James社製の針を買う場合、丸小ビーズを使うなら「size12」、「size13」と表示されているものがちょうど良いサイズです。さらに小さいビーズを使う場合は「size15」がよいです。
日本製のビーズの場合は穴が大きめなので、特小サイズのビーズでも「size12」、「size13」の針でほとんど通ります。
ワックスは、糸をコーティングして、ほつれを防ぎ、糸の滑りを調整するために使います。
糸が何回もビーズの中を通る場合、糸同士の摩擦で糸がほつれたり、弱ったりします。
ワックスがあると作業がやりやすくなります。
糸の滑りをよくする目的の物、ほつれにくさを目的とする物など、いろいろな種類があります。
使う時は、糸をワックスの中に2〜3回通してから、指で糸をしごき、余分なワックスを取り除いてなめらかにします。ワックスを付けすぎると、針穴が詰まったり、べたついたりして作業しづらくなります。糸をワ ックスの中に深く入れないようにするとよいでしょう。
Beeswax」や「Thread Heaven」がよく使われます。それぞれ使った感じは違いますので、好みで選んでください。
Thread Heaven:糸の滑りがよく、糸こぶができにくい感じです。
Beeswax:少しベタッとします。そのため、糸がほつれにくいことと形が保持しやすいことから、私はよくこれを使います。
ろうそくは柔らかくて、固まって糸に付くので、使わないほうがよいでしょう。
は、作品に合わせて使い分けます。特に決まりはありませんので、使いやすいものを探してください。
テグス以外の縫い糸は、ミシン糸ではなく「手縫い糸」を選ぶ方がよいです。糸にわずかな伸びがあり、それがビーズ同士を程よく締めてくれ、きれいに仕上がるからです。ミシン糸で編むと編目がゆるみがちです。
糸の結び方一覧: 糸始末や糸継ぎの参考にしてください。

以下に今まで使ったことがある糸について記述します。
また、紹介する以外にも販売されていますので、手に入る範囲でいろいろ試してください。

テグス 丈夫で、よく締まるのでネックレスや、固く編むパーツを作る時など幅広く使われています。1号、2号・・・と数字が大きくなるほど太くなります。1号より細いサイズもあります。釣具店やホームセンターには豊富 なサイズがあります。
 小さなシードビーズできれいなフラットな面を作りたい時や柔らかい作品を作りたい時は、テグスでは、よじれてしまうことがあります。そういう場合は、後述の縫い糸を使う方がよいです。
Nymo(ナイモ)
ナイロン
細い繊維が真っ直ぐに集り、デンタル・フロスのように見えます。撚りがかかってないので、糸がよじれず扱いやすくて編み上がりがきれいです。
サイズは、000、00、0、A、B、C、D、E、F、G の表示で、一番細いのは000です。

サイズは、BとDを揃えておくとよいです。(BがDがより細い。)
通常、丸小・デリカビーズならD、特小ならBを使うと考えてよいですが、作る物により変わってきます。
特小にDを使うこともありますし、丸小でも込み入った編み方する場合は、Bを使うこともあります。
0はかなり細く、特小で込み入った編み方をする場合や、かなり小さなビーズを使う場合には、あるとよいと思います。


Nymoとよく似た「MONOCORD」という糸や、他のメーカーの商品も何種類かあります。

Silamide
ナイロン
撚りがかかっていてワックスがコーティングされています。ちょっと固く感じるので、固めの作品を作るのによいようです。「A」というサイズがよく使われているようです。
ファイン手縫い糸
ポリエステル
フジックス製)
シルクのような光沢があります。編み上がりは、糸の引き具合にもよりますが、NymoのDサイズを使った時より、やや柔らかい感じになります。 色数も豊富でビーズの色に合わせやすく、手に入りやすいのがよいと思います。手芸店の糸のコーナーにあると思います。もう少し細いサイズがあるといいなと思っています。
ビーズ皿は、基本的には何でもよいですが、ビーズの色が分かりやすいことと針でビーズを拾いやすいことが大事です。透明又は白で、表面がツルッとしていて、浅めのものがよいです。
ビーズが入っていたケースや絵のパレットや梅皿なども便利です。ビーズワーク専用に作られたビーズ皿や、6個の浅いトレイが連結された商品など、その他にもいろいろあります。使いやすい物を探しましょう。
作業用マットは、毛羽立ちのない布やハンカチでもよいです。
ペンチは、ネックレスやブレスレットの仕上げで、金具を取り付ける時に使うので、挟む部分に溝がない、平ら面を持つ物を使うようにしてください。溝がある物は、金具を傷つけてしまうからです。また、ペンチの先端が太いと作業しづらいので、先端が細い物を使うようにしましょう。

オフルームのビーズワークに関する本です。
Amazon.co.jpでも購入できます。
Amazon.co.jpでは、本屋に置いてない本も見つかることあります。
以下に挙げる本は私のお薦めですが、他にもたくさんの本がありますので、好みに合った本を探してください。下記の本は、いずれも洋書ですが、図も多く、説明の部分は、同じ表現が出てくるので、慣れてくると、分からない所だけ辞書引きながらで、読めると思います。

Creative Bead Weaving
Carol Wilcox Wells著 (ペーパーバック、$18.95、ISBN 1-57990-080-1)
ペヨーテステッチ、ブリックステッチ、スクエアステッチ、直角編み(Right-Angle Weave)、アフリカンヘリックス、ネッティング、シェブロンチェインの解説と、それらを利用した作品の作り方が載っています。異な るステッチ同士の組合せ方についての記述もあり、大変参考になる本です。

BEADING with PEYOTE STITCH
Jannette Cook & Vicki Star著 (ペーパーバック、$21.95、ISBN 1-883010-71-3)
ペヨーテステッチだけの本です。個々の作品の作り方は、あまり載っていませんが、基本のステッチから応用まであり、これ1冊でペヨーテステッチのおもしろさを感じられる本です。


Bead & Button
アメリカのビーズ雑誌。オフルームに限らず、いろんな段階に応じた作品が掲載されています。
年間6冊購読料は38$(2004.9.18現在)でBead & Buttonでオンライン 購読申込ができます。過去の記事の一部をダウンロードすることもできます。